地方創生と障がい者雇用

ふたつの社会課題と向き合う
農福学連携キッチンカー(昭和学報2020年4月号より)

 障がい者雇用促進、地方活性化、学生の実践的なビジネスの習得を目指す「農福学連携キッチンカープロジェクト」を2018年から実施。

 このプロジェクトは、ボランティアや社会貢献を行う団体「ハンズオン東京」より障がい者の雇用を促進するビジネスモデルの考案を依頼されたことを機に始まりました。

 障がい者の雇用促進を目指すにあたってまず、メンバーは障がい者雇用についての現状、知識を深めることを目指し、福祉関係者へのインタビューをはじめとする調査を行いました。その結果、障がい者は健常者とあまり変わらず仕事ができること、その一方で雇用の不足や、低賃金労働など、雇用にかかわるさまざまな社会問題を学びました。

 続いて障がい者の雇用促進に繋がる方法を考えるにあたり、メンバーは「耕作放棄地」に関心を持ちました。耕作放棄地とは、農家の手が回らなくなり、取り残されてしまった場所のことです。稼働していないことから、比較的安価で借りることができるといいます。もともと他のプロジェクトで関わりがあった千葉県香取市は耕作放棄地が多数あったことから、これを活用することに可能性を見出しました。

 思いついたのは、「原材料の栽培から、それらをもとに商品を作る」までの一連の流れを障がい者の方とともに行うというアイデアでした。

 これは障がい者の雇用を生み出すだけでなく、商品に一貫性のあるストーリーが生まれ、新たな付加価値がつくことも見込まれます。また、調理販売を障がいを持つスタッフに担当してもらい、ゼロから利益を出す一連のプロセスを経ることで障がい者の方々に自信をつけ、社会での活躍につなげることを目指します。

 それだけでなく、土地を開墾し、新たに作物を作ることで、その地域への経済活性化を実現することにもつながり、別のプロジェクトでお世話になっている地方農家の方々に対しても恩返しをすることができます。

 こうして、地域振興と障がい者雇用促進、学生の学びを同時にかなえるキッチンカーのビジネスモデルが完成しました。

 六本木・東京ミッドタウンでのキッチンカーのプレスリリース兼初回販売を経て、昭和女子大学や明治大学のキャンパス内での販売(コロナ禍のため休止)のほか、港区、北区、世田谷区などで販売を行っています。

 

昭和女子大学「昭和学報」2020年4月号、5頁を一部変更